ショコラ~恋なんてあり得ない~


 家まで送るといって聞かない宗司さんに、あたしが信用できないの? と半ば脅しのように言って駅で別れる。

そこから電車で最寄り駅まで来て、一度家に帰って着替えて洗濯を回す。

キッチンやトイレを見まわして、親父が帰って来た痕跡を捜すけど、とりあえず無さそう。

よしよし、外泊はばれてないな?


そのまま、何事もない顔をして出勤する。
ケーキ販売を始めてから、親父とマサは今まで以上に忙しく、朝も早い。
でもその分売り上げは好調だ。

塾自体の方は効果が上がらなくても、店の方の売り上げには貢献してくれてる。
まだ小さい子を塾に通わせているお母さん方が、お迎えがてら店の方でお茶をしていってくれるのだ。

親父はちょっといい気になって、

「賃貸料払えなさそうなら、午前中だけ雇ってやろうか」

なんて言ってて、最近は宗司さんも午前中だけ店に入ることもあるくらい。

まあ最初の数ヶ月は、それに甘えるのもいいだろう。

いつか立場が逆になるかも知れないし?
その時に嘲笑ってやればいいわよ。