ショコラ~恋なんてあり得ない~


目が点になるとは、こういうことを言うのだろうか。

ちょっと。
今この人うっかりなんか言ったわよ?


「あ、あの、ごめんね。俺帰る」


あからさまにうろたえて、顔を真っ赤にしてカウンターに千円札を置く。
そのままおつりも受け取らないで立ち上がった。


ちょっと待ってよ。
告るのを待てと言ったのはアンタじゃないの。

なのに何?
このうっかり告白。

しかも言い逃げ?
あり得ない、あり得ない。


チリンと鈴の音が響く。逃げるように宗司さんが店を出て行ったからだ。

マサがなんの気なくこっちにやってきて、呆けてるあたしを見て笑う。


「詩子、顔真っ赤だぞ? なんかあったのか?」


その言葉に、ますます顔に血が上る。

顔が熱い。
考えがまとまらない。

胸がドキドキして、確かに嬉しい気持ちもあるけど。

一番は腹が立ってる。