店内を覗くと、親父が宗司さんに睨みを利かせながら話している。
ああ、もう、店員の態度じゃないわよ。
それに奥にお客さん入ってるじゃないの。
水を出しにいけー! バカ―!!
「お待たせしました。マスター、あちらのテーブルにお冷をお願いします」
一応営業用の声でそう言うと、親父は小さく舌打ちをしつつも、グラスに水を入れ始めた。
よしよし、ちゃんと動けよ。
たまには接客側であたしの働きの凄さを思い知るがいいわ。
コホンと一つ咳払いをして、宗司さんの前にフラッペを置く。
じっと見られると緊張して、何だか頬がぴくぴくする。
「凄い。これホントに詩子さんが盛りつけたの?」
「そうよ。前より上手になったでしょ」
「練習してるんだ。凄いな。……頂きます」
宗司さんは嬉しそうに食べ始める。
いつもより丁寧に食べてくれてるように見えるのは、あたしの気のせいかな。



