ショコラ~恋なんてあり得ない~


お水を飲みほしながら、見せつけるように食べ始める親父を見る。

あたしの方を気にしながら、これ見よがしに「食べるか?」なんてスプーンを持ち上げるから笑っちゃう。
一人は寂しいのね?


「要らない。太るもん」

「もっと肉つけろ。もう少し胸に肉があってもいいぞ」

「うるさいな。余計なお世話」

「胸がでかくなるデザートとか作ったら売れそうだよな」

「あ、そうね。確かに欲しいかも」


会話の切れ目も見つからず、苦笑しながら親父の向かいに座る。


「どんな材料使えば胸はでかくなると思う?」

「何だろうなー。プロテイン? あれは筋肉か」

「プロテインは違うんじゃない? 牛乳じゃない?」


そんなあまり現実味のない会話をしながら、親父が食べ終わるまでそこにいた。


「やっぱり詩子のカレーが食べたかった」

「そう? じゃあ明日ね。あたしもう寝るね。お休み!」


自分の飲んだグラスの片付けも親父に頼んで、早々に自分の部屋へ入る。


慰め合うなんてお互い柄じゃないけど。
やっぱり寂しかったから、親父が居て良かった。

母さんが別な人の家族になる。

そういうのって、やっぱりちょっと複雑なものなのね。