ショコラ~恋なんてあり得ない~


 玄関を開けて開口一番、親父が言う。


「あー腹減った」

「何、父さん食べてないの? あたしコラーゲン鍋食べてきた。つるつるになるかも」

「詩子、カレー作ってくれ」

「イヤよ! 自分が食べないのに何で作らなきゃいけないの」

「だって、お前のカレーが食べたいんだ」

「知るか! 明日なら作ってあげるわよ。今日はレトルトでも食べてれば!」

「詩子ぉぉぉ」


知らないってば。
そこまで面倒見れますかって。

大体自分で作れる人なんだから自分でやれよ。

涙目の親父は放置して、風呂に入る。
ゆったり三十分は浸かってからキッチンに戻ると、やたらに濃厚な匂いが鼻についた。


「俺の今日の夕飯は特製ソース付きのオムライスだ。良いだろう」

「……何なのよ、その負け惜しみ感たっぷりな言い方」


ムカツクったらないわ。