ショコラ~恋なんてあり得ない~



「それより、マスターをなんとかしてくれよ」

「なんとかって言われてもなぁ」


こっそりと、厨房を覗く。
こちらに背中を向けた状態の親父が、頬づえを突きながら座っている。


「はぁ……」


わざとらしく溜息を言葉に出している。
相変わらずウザイ。


今日出すケーキとかちゃんと出来てるのかしら。

無言で厨房に入り、冷蔵庫を覗く。

一、二、……五品はあるな。
でもいつもだったらこの時間七品は出来上がっているはず。

横目でちらりと見ると、気まずそうに目をそらす。
悪気はあるのね?

じゃあ、むしろ居丈高に威圧してやる。