ショコラ~恋なんてあり得ない~


 その日、家に帰ると珍しく親父は帰っていなかった。
道理でいつもより遅く帰ったのに文句の電話もなかった訳だ。

お風呂に入って寝る時間になっても、親父は帰ってこない。

新しいアイデアを思い付くと夢中でやってしまうような人だから、きっと店にでもいるのだろう。

そう思って、あたしはすぐに眠りについた。


 そして翌朝起きた時も、すでに親父はいなかった。

まだ五時よ?
もう仕込みに入ったのかしら。

台所には、親父が飲んだのであろうマグカップが洗われている。

帰ってきてない訳じゃないみたいだけど。

まあいいか。
店に行けば分かるだろう。

あたしは適当なもので朝食を食べ、いつものように洗濯に取り掛かった。