ショコラ~恋なんてあり得ない~


体は触れないくらいの距離で、でも、息がかからないこともないくらいの近さで。

頭の後ろに添えられた手に力がこもって、あたしは頭だけを彼の胸にうずめるような形になる。

心臓がドキドキする。
それは、さっきの男の子に声をかけられたときとは別の意味で、もっと激しく。


「……宗司さん?」

「強くたって、怖いものは怖いでしょ。詩子さん女の子だよ?」

「宗司さん」

「俺の方が心臓止まるかと思ったよ。詩子さんに何かあったかと思った」


さっき、男を締めあげるあたしの姿を見たっていうのに、そんなふうに言ってくれるの?


「……」


顔が熱くなる。
もう何なの。

どうしてあなたはそうなの。
情けなくて頼りない癖に、どうしてこんなに好きだって思わせられるの。