ショコラ~恋なんてあり得ない~


「どうしてここに居るの? 詩子さん」

「よ、酔ってたから。ちょっと散歩」

「もう夜だよ。一人なんて危ないじゃない」

「だって。いいじゃない、ちょっとくらい酔い覚ましのつもりだったのよ」


宗司さんから溜息が一つこぼれる。
ちょっとなんであたしが怒られなきゃいけないのよ。


「さっきの人は?」

「フラフラしてたら、声かけられたの。遊ぶ気ないからって言ったら腕を掴まれたから、締め返してやっただけ」


宗司さんはゆっくりとあたしの手を持ち上げる。


「怖くなかった?」

「平気よ。前にも言ったでしょ。護身術習ってたって」

「でも震えてるよ?」

「え?」


確かに、宗司さんの掌に乗せられたあたしの手は、小刻みに動いている。

いや、これは多分手を上にあげてるからよ、って。

そう言おうとして、言えなかった。

宗司さんが、あたしの手を引っ張ったから。