あたしはどのくらいそこでボーっとしていたのだろう。

気がつくと近くに男の人がいた。


「おねーさん、やっぱり一人なんじゃないの?」


声からすると、さっき駅で声かけてきた人のようだ。

よくよく見ると大きな男の子だ。
ちょっと濃い顔つきで、なんとなく目が血走っている。

あれ、やばい?
この状況。


「人を待ってるのよ」

「こんな暗がりで?」


一歩後ずさるあたしに、にじり寄る彼。

吐く息はミント臭。
ガムはもう捨てたのか?

さりげなく相手を観察する。

どうしよう。
体格差は大きいな。


「俺と遊ばない?」

「結構よ。遠慮しとく」

「そんな事言わないで」


そう言って、男はあたしの腕を掴んだ。
咄嗟に脇を締めて、腕を引き抜こうとした時、男の体が近づいてくる。

次の瞬間、辺りには悲鳴が響き渡った。