飲み始めたのが早かったから、まだ時刻は九時前だ。
駅まで戻ると、日常的な会社帰りのサラリーマンの姿がちらほら見える。


「おねーさん、一人?」


なんて声をかけてくるのは大学生かしら。
ラフな格好をして、ガムなんかくちゃくちゃさせてる。


「ごめんね。待ち合わせよ」


適当に返事をしつつ、自然と足は宗司さんの塾の方へと向かう。


そろそろ仕事終わったかしら。

和美ちゃんの言うように、ホントにあたしを放っておいたら、こんな風に他の人から声かけられちゃうのよ?

分かってんの?


とぼとぼと歩きながら、まだ明かりのついている宗司さんの職場を見つめる。


宗司さんいるのかな。

会いたいな、なんていうのもダメ?


塾からは出入りする学生の姿が見える。

結構出てきたから、授業は終わったのかしら。

でも灯り消えないし。
宗司さんらしき人も出てこない。