ショコラ~恋なんてあり得ない~



親父は、宗司さんを上から下までつらっと見た後、あたしとマサに視線を注いだ。


「お前たちは、お互いのを食べて見てどう思った?」


そんな事聞く?


あたしとマサは一瞬顔を見合わせて、でもあたしの方が先に話始めた。


「マサのはおいしかった。見た目もとても綺麗。
『ショコラ』のケーキは味だけじゃなくて見た目も重視しているでしょう。
だからやっぱりマサの作るものは『ショコラ』に合ってると思う」


そう。悔しいけど。
親父とマサにあって、あたしに無いものはそれだ。

繊細なる美。
それはあたしには多分一生かかっても習得できない。


「なるほど。じゃあマサは?」


親父に促されて、マサは腕組みをして答える。


「まずは、さすが詩子ってところですね。目線が客目線だ。
見た目はまあ置いておいて、アイディアは流石です。

中から違うものが出てくれば子供は喜ぶし。子供用のヤツは皿が小さいでしょう。
これも意図的だろ?」

「まあ……ね。だって、子供って食べきれないじゃない。
だから料金を下げて小さめサイズにすればいいと思ったのよ」