「正直見た目はこっちです」
宗司さんが指を差したグラスはマサのもの。
「バランスがとてもよくて、見た目で楽しめるっていうか。味も間違いのないおいしさでした。
喫茶店として万人に売れるものをと考えたらこっちなのかなって思います」
「うん。そうだな」
親父も同意する。
そうね。あたしもそう思うわ。
「でも俺がまた食べたいのは、こっちです」
宗司さんがそう言ったのはあたしのコーヒー味のフラッペ。
「このお店に入って、一番に感じるのがコーヒーの香りです。
マスターのケーキはどれもおいしくて、いつも違うものを食べてしまいますけど、何度でも飲みたいっていうのはコーヒーですよね。
このフラッペもそんな感じでした。また食べたいなって思う。
今度はゼリーはゼリーだけで食べようかな、とかそんな風に思う楽しみもある。
コーヒー好きな大人には、これうけると思います」
自信ありげにそんな事言われると、何だか照れてしまう。



