ショコラ~恋なんてあり得ない~



『あ、詩子さん』

「え?」

『電話、ありがとう』

「……うん」

『ごめん。仕事始まるからまたね』

「うん。頑張って」


そのまま通話は途切れる。
プープーという電子音が聞こえてもあたしは電話を切れずにいた。


何だか力が抜けちゃった。

宗司さん、怒ってなんかないじゃない。

悩んで損したわよ。
だったらもっと早くにケーキ食べに来なさいってのよ。


「……良かったぁ」


ホッとした瞬間にポロリと涙がこぼれ出る。

イヤだ。どうして。

安心して涙が出ることなんかあるの?


……そんなの、初めて知った。