『あ、詩子さん』
「え?」
『電話、ありがとう』
「……うん」
『ごめん。仕事始まるからまたね』
「うん。頑張って」
そのまま通話は途切れる。
プープーという電子音が聞こえてもあたしは電話を切れずにいた。
何だか力が抜けちゃった。
宗司さん、怒ってなんかないじゃない。
悩んで損したわよ。
だったらもっと早くにケーキ食べに来なさいってのよ。
「……良かったぁ」
ホッとした瞬間にポロリと涙がこぼれ出る。
イヤだ。どうして。
安心して涙が出ることなんかあるの?
……そんなの、初めて知った。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…