ショコラ~恋なんてあり得ない~


「あの、喫茶『ショコラ』のものですが」

『詩子さん?』


声がワントーン上がった。
それに気をとられて、静香ちゃんの名前を出すのを忘れてしまった。


「あ、あの」

『詩子さんでしょ?』

「……うん」


声を聞けることがこんなに嬉しいって思うなんて、自分でも意外だ。


『良かった。俺、詩子さん怒ってるかと思ってた』

「お、怒ってるわよ。突然来なくなるとか、あり得ない」

『だってもう店には来るなって』

「あんなの、勢いで言っちゃったに決まってるでしょ」

『そうなの? 俺本気にして落ち込んでたんだけど』

「だったら確かめに来ればよかったじゃないの」

『そっか、ごめん』