やがて十二時を過ぎるとランチの客がたくさんやってくる。
一日のうちで一番忙しい時間だ。

料理や、飲み物をつくるのは親父とマサ。
夕方に交代してくれるバイトの静香ちゃんが来るまで、ウェイトレスはあたし一人だ。

ハッキリ言ってキツイ。
とはいえ座席数から考えてもこれ以上の人員は雇えない。
手が空けばマサが手伝ってくれるけど、この時間帯は作る方が忙しい。

ここが頑張りどき。気合を入れなきゃ。


慌ただしく注文を聞き、出来上がったものを運ぶ。
食事を終えた人が席を立てばレジへ。
それが終わればすぐテーブルセッティング。

あたしの動きに無駄は無いわよ。
絶対そこらのウェイトレスより使えるって。
それなのに給料は家族価格なんだから、割に合わない。


そんな中、あの集団が立ちあがった。優柔不断男と子供三人の組み合わせ。
当然、あの男が払うのだろうとレジに向かう。


「千五百五十円になります」


あたしの声が聞こえているのかいないのか、彼はポケットの中を必死に探っている。

ちょっと早くしてくれないかしら。
あたし忙しいんだけど。