「うわー、おいしそうだなぁ」
なんて、無邪気な発言。
なんとなく敗北感を感じてしまうのは何故なのか。
嫌味が通じないって虚しいものなのね。
ひきつった笑顔で、伝票を置いた。
「……サービスです」
「ありがとう」
負け惜しみのように言ったのに、素直に感謝される。
あくまでも無邪気なその男に、悔しさを感じつつカウンターに戻った。
「ほらマサ、ちょっと試作のケーキつくってみたんだ。この中のクリーム食ってみろよ」
「あー、さすがマスター。これ何入れたんですか? ラズベリー?」
厨房からは甘党二人のケーキ談義が聞こえてくる。
ああなんだかもう、面白くない。



