あたしは怒りを態度に表さないように、それはそれは一生懸命気を使いながらカウンターまで戻ると、マサに向かって小声で呟いた。
「ウィンナーコーヒー。ウンチみたいに一杯乗せてやってクリーム」
「ぶっ、詩子。何言いだすんだよ」
「うるさい、いいから言う事聞きなさいよ」
「機嫌悪いな、笑顔消えてるぞ」
「だって!」
あの男が悪いんじゃない!
って思うけど。
確かにそうね。ここは仕事場。笑顔はビジネス。
一度化粧室に入って、顔の体操をする。
なんとかいつもの表情に戻った所で、出来上がっていたビーフサンドとコーヒーを常連客のところに持って行った。
「ありがとう。詩子さん」
「いえ、いつもありがとうございますぅ」
「今度デートしようねー」
「えーまたまた。中峰さん彼女いるんじゃないですかぁ? からかわないでくださいー」
「彼女なんかいないよー。俺、詩子ちゃん一筋だから」
「あはは。ありがとうございます」
よしよし、調子が戻ってきたわ。
軽くあしらってカウンターに戻ると、今度は優柔不断男とその仲間の子供たちの注文が出来上がっていた。



