だけど、今日は少し違った。

最寄り駅で電車から降りて、いつもならすぐにバス停に行く。

けれど途中でおなかがいたくなって、駅のお手洗いに寄った。

幸いお腹の痛みはすぐに治まり、私はバス停に向かって歩き出す。



もう少しで着くというところで、突然後ろから肩をぽんぽんと叩かれた。

恐怖を感じて、後ずさりながら振り返る。

そこにいたのは、学ランを着た同じ年くらいの知らない男の人。

背は雄悟先生より小さいけど、私よりははるかに大きい。

黒髪の短髪で、スポーツ少年のような出で立ち。



「南だろ? 久しぶりじゃん」



え、だ、誰?

私、男の人の知り合いなんて雄悟先生くらいしかいないよ……?

それに、こんな急に肩叩いて声かけられて……。

ただでさえ男の人が怖いのに、余計怖くて声も出ない。

何も言わない私にしびれを切らしたのか、男の人は口を開いた。



「俺だよ俺! 聖! 金森聖(かなもりひじり)!」