ここまでの撮影。
最近は自分の演技の結果よりも、天崎の事ばかりを気になってしまう。
まだ演技も完璧でないのに、自分でも偉くなったと思う。
でも、どうしても意識がそちらに向いてしまう。
石垣には止められなかった。
「ふう……」
天崎もいないし長居は無用。
いつものようにスタジオの廊下を通って駐車場に行こうとすると、先程共演した佐々木に出会った。
「あ、康クン~~~~。お~~~~い」
……これが先程と同じ人物だから驚きものだ。
石垣はコウ役と性格が似たようだが、佐々木と本美は違う。
女は誰もが演技派だと、昔友人が素人女性を語っていた事を思い出させる。
本当にこの人のギャップは、凄いと思うから。
「やあ栄子。さっきはお疲れ様」
「うん、お疲れさま~~~~康クン本当にキスしてくれても良かったのに~~~」
先程の撮影は唇が当たらないような内容の台本。
実際キス何てしていない。
もし本当のキスシーンならば、本番前にもっと緊張している。
「……な! 何を言うんだ、いきなり!」
「アハハ、可愛い~~~そんな康クンエーコは好きだよ~~」
またからかわれたようだ。
しかも、臆面もなく好きって……
自分もこんなに簡単に、天崎に対して好きと言えたらいいなと、佐々木を羨ましそうに眺めた



