新人俳優が何を言うか。
そう自分自身でも、自問自答する事がある。
溜め息をつきながらスタジオ入りすると、後ろからポンと声がかけられた。
「おはようコウ。どうしたの元気なくない?」
「おわっ! 天崎! ……いや由奈」
つい本名で呼んでしまったが、溜め息の原因が目の前にハテナ顔をして立っている。
「クスッ。寝ぼけてる? でも気が抜けちゃう気持ちは分かるよ。私も初めてのドラマの頃、最終撮影日が近付くと何か物寂しくなったもの」
そう言われて石垣はハッと気付いた。
『パンドラの箱』のクライマックスも近い。
そうなると必然的に、天崎と会う機会がなくなる事に繋がる。
「――――っ~~!!」
しまった。
それを考えていなかった。
ずっと一緒に仕事していられるような感覚が、考えもせずにあったのは不思議。
また余計な悩みが増えてしまいそうだ。
物語も佳境。
自分でも気付かず内に、もう何ヶ月も撮影していたのだ



