ガッ!!!
「俺は由奈が好きだ! そんな事で悩むんじゃない!」
好きだ!
好きだ好きだ好きだ好きだ!!!!
由奈が大好きだ!!!!
この時意識は既にコウのつもりではなく、石垣の気持ちで抱き締めていた。
離したくない、離したくない、離したくない。
気持ちが演技より先行してしまい、より強く抱き締めてしまう。
すると、由奈は一言漏らした。
「苦しいよ……コウ……」
ん?
この台詞は……
そう思った後、由奈は振り返って抱き締めてきた。
「でも……気持ちは伝わったよ。もう私迷わないから! 私もコウが好き、誰よりも好きだから!!」
先程の台詞は台本にないものだ。
うまく繋げたが、果たしていいのだろうか?
目を瞑り、抱き締めたまま石垣は思っていると……
「カット! はいOK」
羽場監督もアドリブが入ったのが分かったが、自然を大事にする演技を求めているので、あっさりとそれを認めた。
普通はあまりない光景なのだが、これは羽場監督ならではの考え方なので、一発OKをもらえたのである



