天崎は特に気を使う事なく、腕をググッと伸ばした。
「ふう。ちょっと疲れちゃった」
何か解放されたかのように、力を抜いている。
「疲れた? どうして?」
「あの人……栄子さん。パワーあるでしょ? それに圧倒されちゃって」
迷惑って程の事でもないが、やはり早期に仲良くなった理由か、多少の気は使うらしい。
まあ相手も女優の1人。
身構えてもおかしくない話だ。
事実石垣も、周りの俳優はみんな敵(ライバル)と思えと言われてきたので、何となく分かる気がする。
まあ、あの様子なら、当の佐々木は何も考えずに、ただ仲良くなろうとしてるだろうが。
「今日も来るとき送ってくって言われたから、断りきれなくてね。あ、いい人だよ? それは本当なんだから。でも帰りまで送ってもらうと考えたら何か申し訳なくて。方向反対なんだもん」
だから即決で石垣の車に乗っていくと言ったのだ。
少しガッカリする。
(なーんだ、俺と一緒に帰りたいって理由じゃなかったんだ)
そう石垣は思いながらも、それでも2人で居る時間は楽しいので、笑顔は崩さなかった



