しまったと思いつつも、別の言葉を出そうとした石垣。
しかし、先に口を開いたのは羽場監督であった。
「こいつだ! 私のイメージにピッタリだ!」
当然、石垣は驚く。
それだけでなく、奥に立っていたプロデューサーも、同じ表情を浮かべた。
石垣からすれば、あっさりと
言われたかのように思える。
しかし、プロデューサーは違う。
実は、このキャスティング選抜もここ数日行われ続け、これで五回目程度の開催である。
過去の集まった男達も、決して演技は見ずに、羽場監督は見た目だけで不合格にした。
今のように『声を出してくれ』と歩み寄った事もしばしばあったが、聞くだけ聞いて去ってしまった。
どうやら、今回のが当たりらしい。
イメージに一番合ったキャストは、この新人俳優石垣康広である



