「皆さん、今回のドラマ制作にあたって、私の構想の中でここにいる1人1人、個々がイメージ通りのキャストとなっています。
誰一人かけても、このドラマは成り立ちません。
己の役をよく理解し、感情を移入して演技にあたってください」
……おお。
この間からのイメージとして、もっと奇抜な言葉や上から命令するような言い方をするかと思ったら、なかなかどうしてしっかりとした丁寧な挨拶をすると石垣は感心していた。
また一段と、監督のイメージが変わった。
感情移入……
そうは言うものの、これがなかなか難しい。
プロともなれば、『泣く』『笑う』『怒る』などの基本演技の他に、細かい表情まで問われる事がある。
当たり前の事だが、それが出来なければ俳優女優として成り立たない。
頑張ってやり遂げなくてはいけない。
石垣の意気込みをよそに、監督はドラマの全貌を話す。
「このドラマは、自分の記憶を失った少女が一つ一つのパズルを解き、徐々に記憶を取り戻すと言う物語であり、名前の通り決して開いてはいけない記憶に辿り着くと言う内容であります」
なる程……このタイトルの由来はそう言うところから来ているのだろう。
手元の資料には『パンドラのボックス』と書かれた台本……
ずしりと重さを感じる……



