「石垣クン……名前はさっきの子から聞いたけど、歳はいくつなの?」
「年齢……ですか? 天崎さんと同じく23です」
向こうは知らないのは当然。
新人だから。
こっちが知っているのも当然。
有名だから。
このあたりでも多少知名度に差を感じて、心苦しい感じがした。
「同じ歳なの!? じゃあ、それこそ改める事ないわ。
気楽にいきましょう」
……そうしたいのは山々だが……
誰がこの石垣と同じ立場になったりしても、いきなり大女優に気さくに言葉を交わす事は出来ないだろう。
さて、そうは言っても彼は返事を何て返すのか?
頭で試行錯誤した言葉は、次のように浮かんできた。
『分かりました』
『そうですね』
『了解しました』
(いやいや……今言われたばかりだし、敬語直ってないじゃん……)
『おお、任せとけ』
『オッケー了解』
『そうだねそうするよ』
(……ちょっといきなり馴れ馴れし過ぎるか……)
『了解でつかまつる』
『分かったピョーン』
『次からそうするソーリー! 髭ソーリー!』
(ウケ狙い過ぎ。馬鹿過ぎ。意味分かんな過ぎ)
駄目である……
こんな事を言えば逆に変な噂が立ち、芸能界生命が危うい……
違う意味で、有名人になっても仕方がない。
そして、ついに石垣が考えに考え付いた言葉を言おうとすると……



