「どうしてここに?」










「さっき、栄子さんに言われて追ってきたの。『康クン元気なくて、海の方に行っちゃったみたい』って言われて気になってさ」










佐々木栄子……!


どうやら気を使って、知らぬフリで天崎を仕向けたらしい。










「演技……良かったよ? でも……心があるように見せて、まるでなかった。私が原因だよね……?」










「……いや。天崎さんの指導のお陰です。あまり人に感情移入し過ぎない為の、私なりの演技ですから……」










天崎を先輩として、お礼の言葉を述べる石垣。





ご丁寧に頭まで下げて、それじゃあまるでこれからもそれを忠実に行うと言っているようなもの。










それではいけないと、天崎はこの間の話を持ち掛けた。










「ごめんねコウ。でも女心は分かって欲しい。私は演技に生きている分、逆に演技の私を好きになってほしくない。全く自分と違う人物を描いて、役に入っているから……」










何が言いたいのか、必死に頭の中で理解しようとするコウだが、うまくまとまらなかった。









「女心……?」










「そう……だから……エット……ドラマで抱き締めたから好きとかは嫌だから。貴方がちゃんとドラマの由奈じゃなく、もう一度天崎優を見て、それでも好きなら真剣に考えるから。返事は確実にいいとは言えないけど……」











それって……!











好きでもなければ嫌いでもない天崎。






可能性は残されていると理解した