それからと言うもの、石垣は演技の稽古により力を入れた。
自分で恥をかかない為にも、少しでも大女優のレベルに近付きたかったからだ。
日に日に近付く顔合わせ…
負い目を感じて、自信のない顔をさらけ出さない為にも、ここが踏ん張り所である。
時間は無情にも過ぎ、あっと言う間にその日が訪れた…
ピピピ……
時計のアラーム音が鳴る。
それもそこら中で。
「ああ!
うるさいなもう!」
布団の横
テレビ台の上
台所
洗面所まで
初日から寝坊なんて事をしないように、万全過ぎる対策の為、そこら中に仕掛けた目覚まし時計が鳴り出した。
新品で買った時計達は同時刻に全てが鳴り、1人暮らしをしている石垣は、全て自分で止めなければならなかった。
「ふう……
少し早いけど昨日も早く寝たし、睡眠だけはバッチリか……
さて、用意するか!」
テキパキと着替え、過剰過ぎる程身なりを整えた。
(もうちょっとカジュアルな方がいいのかな…
いやいや! ベテランでもないのにゆったりとしてどうする!
何様だって思われるよ!)
石垣は石垣なりに色々と試行錯誤し、考えうる全ての準備をしっかり整えた。
さあ、行こう。
玄関を出るここからが、第一歩のスタートだ。
変わらぬ顔のドアだが、彼にとっては可能性という名のドアを開き、大きく外に踏み出した



