由奈は立ち止まったまま、思い出を蘇らせる。
コウと毎日楽しく食事した記憶。
コウと休みにデートした記憶。
コウと隣り合わせで眠り、優しく髪を撫でてくれた記憶……
そのどれもに、最後に一瞬だけコウの寂しげな顔があった。
今まで気付いていなかったが、そのどれもがこれに関係している。
癖だと思ったのか、気付いてやれなかった由奈。
コウは五年間も、ずっと苦しんできた。
両親の仇である男の息子……
ずっと憎いと思っていた肉親が、自分を騙し続けて付き合って来たのだ。
「あの男……!!」
由奈は悲しみを変え、急に怒りが芽生えてきた。
そして、その場を飛び出すように走り出す



