「容疑者は俺の父親……知られて欲しくなかった……。事件のあった時、記憶を失って犯人の顔を覚えていないのと、事件を知りたくないと言われて、不謹慎ながら俺はしめたと思った。由奈から離れなくて済むと……」
由奈は、未だ黙って聞いている。
何も言葉が出ないようだ。
「結婚もしたかった。ずっとずっと由奈を愛していたから。でも……出来なかった!! 死んでしまった天国の両親に何て言う!? 自分達が殺され、娘の命も失いかけた全てを奪った男の子供と結婚する? 認められないよ!」
コウは記事を勢い良く破り、ゴミクズを地面に叩きつけた。
その顔には涙が宿っていた。
「だけど……離れられなかった……事件があってからこの五年間。結婚も拒否し続け、いつか由奈が飽きるのを待っていた。だから、本美との事も浮気だと思われてもいいと思った。本当に……本当に辛かった」
涙がボロボロと滴り落ちる。
一緒に住んできて、その恐怖と毎日闘っていたコウ。
どれ程……辛かったか……
相手を愛しているのに、ずっと一緒には居られない生活は。
笑顔を返してくれる人と、いつか別れなければいけない日が来るのを分かっていた感覚は。
想像を絶する



