「ウフフ……アナタに彼は荷が重すぎるわ……私は構わないわ、父親が容疑者でも彼は関係ないもの。だけどアナタはそうはいかないわよね……何てったって自分の一家が殺されたのが、彼の父親なんだから」
冷たく言い放つ本美。
分かっているのに、いちいち事実を説明して傷を深くすると言う汚いやり方だ。
「……! 役者は揃ったようね。じゃあ、私はこれで行くわ。別れを楽しみにしてるから」
吐き捨てるように言い、本美は駐車場を後にする。
するとそこへ、今度はコウが来たのだ。
「由奈!?」
コウ自身驚いた。
由奈のつもりで会いに来たわけじゃないのだから。
実は本美に呼び出されたコウ。
本美はあえて自分が由奈と会う時間を数十分ズラして、コウを呼びつけたのだ。
感情が高まったまま別れればいいと、これが彼女の作戦の全貌である。
「由奈……?」
涙を流す由奈を見て、コウは本美に自分と愛し合っているなどと言われたのかと思った。
未だ事件を知られた涙とは、気付いてもいなかった



