「そろそろ行こうか」
腕時計を見て、石垣はそう言った。
ここへ来て二時間弱は経つ。
うまく演技が出来ない理由の回避をし続け、話を引き伸ばしていた結果だ。
人生で、一番疲れる会話であった。
「そうね。行きましょう」
そうして店を出ると、何かに解放されたかのように石垣は体を伸ばす。
すると、天崎は路地裏に行き、手で招いてきた。
「コウ。こっちこっち」
素直について行くと、そこには小さな公園があった。
そこに入り、天崎は遊具を見回して語った。
「フフ、私も昔はヘコんだ時にあの店でオジサンに愚痴るだけ愚痴って、更にここで悲しんでいたのよ。懐かしい……」
天崎は1人はしゃぎ、ブランコに乗ってみせた。
「そう言えば、由奈もこんな風にブランコでイジケるもんね。ここ、あの前の公園に似ているわ」
……
前の公園とは、撮影の時に天崎を力いっぱい抱きしめて愛を語った公園だ。
昨日見たドラマのシーン。
それより、昨日見ていた場所のシーンの方が蘇る。
こんな風に、思い返させられるとは……
虚しさが、段々と自分に対する不甲斐なさの怒りが込み上がってきた



