2人が来たのは、当然あの焼鳥屋。
いつものように、天崎専用の個室に通してもらえた。
「ちょうどいい日に来たなユウ坊。今日は名古屋コーチンの旨いとこが入ってるんだ。今焼いてきてやるからな」
「ありがと、オジサン★」
そのまま出て行くと、話すターゲットを石垣にむき直した。
「それで……どうしたの? 体調が悪いのとは違う動きだったね。何か悩みでもあるの?」
流石演技のプロ。
体調のせいでの動きじゃないと、見抜いている。
長年演劇にドップリ浸かっていれば、そのくらいの洞察は鋭く見分けられる。
「……そんなに考え事してるように見えた?」
食事に来た意味もなくなるので、そんな事ないとも言えないし、かと言って素直に悩みがありますとも言えない。
だって悩んでる相手が、アナタなのだから。
話を濁しつつ、核心に触れないような会話に持って行くしかない。
「うん、心ここにあらずって感じかな」
「そう見えたんだ。由奈は初めて演技した時に、スランプとか陥った事あるの? ほら、誰しも通る道って言うしさ」
「あ~~……私の場合はねえ……」
話を聞き終わると、間髪入れず天崎に関する次の話題。
相手を中心に話を進め、それで時間をうまく潰して行く。
死ぬほど楽しい時間なのに、どうしてこんなに心の中の風が吹くように寂しく感じるのか?
その笑顔の一つ一つが、何度も釘を打ちつける



