それでも、壊れた自然は元には戻らなかった。
山が昔のような美しさを取り戻すには、何十年・・何百年とかかるだろう。
けれど、それでもいい。

陸の脳裏に、桜の木の前で言ってた大樹の言葉がよぎった。

人間の力はちっぽけだ。
どんなに頑張ったって、何も変わらないかもしれない。
だけど、何もしないよりはずっといい。
意識を変えるだけで、何かは変わる。
無駄なことなんかないんだと、陸は思った。

汚染された土砂の影響で、土しかない原っぱにやってきた。
小さなゴミを拾いながら、澄んだ空色を見上げた。

小学校最後の春。
中学は隣町にある。
毎日来ていただけに、この山が名残惜しかった。

「毎日、ありがとうね。」
突然、大樹がふっとはにかんだ。

来年、山のふもとにちゃんとした処分場ができる。