「あ、でも椋ちゃんは悪くないから。
パパから何か言ったりとかやめてよね」


釘を刺すと、パパはハハって笑って頷いた。


「分かってるよ。私情を持ち込んだ時点で、社長失格だ。
それに、葉山くんがいい男だって事も、咲良をいたずらに悲しませたりしないって事も分かってる」
「そうだよ。いい男なの。そんなお見合い写真の男よりずっと」
「よく見てないだろう」
「見なくても分かるの。
とにかく、椋ちゃんに何か言ったりしないならそれでいいから」


パパもママも、椋ちゃんの事が気に入ってる。

それはこの家で何年か一緒に暮らしてたからって理由もあるのかもしれないけど、椋ちゃんの人柄だと思う。

誠実で、優しくて気が利く。
人当たりも柔らかいし、どこをとっても、理想の男。

だから、うち的には、椋ちゃんが相手なら結婚だってすぐOKが出そうなのに。
肝心の椋ちゃんは、ちっとも振り向いてくれない。

毎朝頑張って作ってるハムエッグも、昨日作ったビーフシチューも。
椋ちゃんの胃袋を掴んではくれなかったみたいだし。


恋愛って、難しい。