「バカバカバカバカ」


誰かと一緒だったとか。
祝ってもらってたとか。


「バカバカバカ……」


10回目くらいの“バカ”で、涙がエレベーターの床に落ちる。
その直後、ポンって小さな音が聞こえて、すぐに“閉”のボタンを押した。

他の女の匂いをさせた椋ちゃんと一緒にいたくなくて、すぐ部屋を出たのに。

あたしにまでまとわりついたあの香りが、全然離れようとしない。


エレベーターの中が、あの香りと嫉妬の気持ちで充満する。


「……椋ちゃんのバカ。……ばかぁ……っ」


とっくにエレベーターは1階に着いてるのに、動けなかった。



誰と会ってたの?
あたしじゃない誰かとなんて、一緒に過ごさないで。


あたしを、好きになってよ。

椋ちゃん。