「そんな時間までいたのか……。ちゃんと迎えにきてもらったか?」
「……パパが、マンションの前まで車できてくれた」
椋ちゃんは、安心したみたいにため息をつく。
それから、困り顔で微笑んだ。
「ごめん。
……でも、ビーフシチューもケーキもうまかった」
本当だったら、喜んでる言葉だ。
“ホント?! じゃあまた作る!”なんて、はしゃいでる言葉。
なのに、素直に受け取れなかった。
「……嘘ばっか」
「嘘じゃないよ」
「こんなになるまでお酒飲んでたんじゃ、味なんか分かるわけないじゃん」
「……咲良?」
「それに、同期の人たちにお祝いしてもらったんでしょ?
あたしが作ったのなんかより、お店で出た料理の方がおいしいに決まってるもん」



