一途に IYOU〜背伸びのキス〜



「咲良……昨日はごめん」


申し訳なさそうに言う椋ちゃんを見て、悲しくなる。

悲しくて……悔しくて。


聞いちゃダメだと思った。
だって、感情のまま話すなんて、子供っぽいから。

ただでさえ椋ちゃんとは10才離れてるんだから、子供だなんて思われたくない。

……でも、しょせん子供のあたしには、何でもないフリなんてできなくて。


「昨日……誰かと、会ってたの?」
「同期のヤツらと、ちょっと……。
何時まで待ってた?」
「……21時」


椋ちゃんに嘘をつかれてる感じがして、目を逸らしながら答える。

だって、女の人の匂いがするのに、“同期のヤツらと”なんて。

同期の人に女だっているだろうし、嘘じゃないのかもしれない。
けど……一度疑っちゃうと、全部が嘘に思えちゃって。


うまく、微笑めない。