一途に IYOU〜背伸びのキス〜



涼ちゃんが寝ぼけている事をいい事に、抱き締め返そうと、手を上げる。


だけど。

さっき感じた香りが強まったのを感じて、バっと椋ちゃんの胸を押して身体を起こした。

それで目が覚めたのか、椋ちゃんが驚いた顔であたしを見る。


「……咲良?」


まるで、“なんで咲良が?”って聞いてるみたいなニュアンスだった。

それを聞いて、さっきまで幸せだった気持ちが一気にしぼんでいく。


椋ちゃんは……寝ぼけて誰と間違えてあたしを抱き締めたの?
服に香りが染み込むほど、昨日、誰と一緒にいたの?

27回目の誕生日を、誰とお祝いしたの……?


「ああ、そっか……。
昨日、このまま寝たんだっけ」


上半身を起こした椋ちゃんが、自分の服を見て呟く。

それから、あたしを見た。