「うん。仕事の事はよく分からないけど、先生に怒鳴ったりしたら椋ちゃんのマイナスになっちゃう事は分かるから。
だから……あたしは大丈夫だから、椋ちゃんには仕事の事を一番に考えて欲しいの」
「仕事を一番に、か……」
「先生の意地悪は許せないし黙ってるのも嫌だけど……でも、椋ちゃんの仕事の邪魔にはなりたくないし、それに、パパの顔も立てないとマズイのも分かってる。
あたしは……椋ちゃんとの結婚に賛成してくれたパパに感謝してる。
椋ちゃんと一緒にられるなら、ちょっとぐらいの意地悪我慢するのはなんでもないよ」


「それにあたしやり返してるし」と笑うと、椋ちゃんも眉にしわを寄せたままなんとか笑顔を返してくれる。
暗い車内でそんな風に微笑まれると、胸が跳ねてしまうから困る。

だって椋ちゃん、えっちな事してる時、最後の方そんな顔するから。
ついつい思い出しちゃって、恥ずかしくて顔が熱を持つ。


「咲良が俺のために我慢してくれるのも戦ってくれるのも、嬉しい事なんだと思う。
俺だって、自分の立場は分かってるし、相手の会社の社長息子相手にケンカを売るようなバカな真似はしない。
でも……それでもやっぱり気に入らないんだよ」