テーブルの上には、いれたてのコーヒーが湯気を立てる。

“言い忘れてた事”がなんなのかは、あたしも知らない。
だから、隣に座る椋ちゃんを見つめてた。


低い声も涼しい横顔も、本当にカッコいいなぁ。
そんな風にノンキに考えていた時。

椋ちゃんが言った。


『咲良さんとは、結婚を前提にお付き合いさせて頂いてます。
なので、それを社長にも伝えておきたくて、今日こうしてお時間を頂きました』
『『け……っ』』


重なったのは、あたしとパパの声。
ママは、『あらあら』って嬉しそうに微笑んでた。


『結婚って……いいの?!
言っておくけど、この手に話題で、パパに冗談は通じないんだからね?!』


腕を掴みながら聞くと、椋ちゃんはニコって微笑んだ。