身を乗り出して言うと、椋ちゃんはふって笑った。
そして、しばらく黙って運転をしてから、ぽつりと言った。
『そのうち話すよ』
『そのうち話す気があるなら、今話してよ。
その事があったから、椋ちゃんはあたしに手を出してくれたんでしょ』
『その事があったから、18になっても気持ちに応えるのはやめた方がいいとも思ってたけどな』
『なにそれ。全然意味わかんない。
そういうヒントみたいな事言うなら、ちゃんと話してよ』
ふくれて言う。
だって、さっきから椋ちゃんの言う事は暗号みたいで意味が全然わかんないんだもん。
『ここ一年は特に』とか、『その事があったから』とか。
ヒントにもならない、わけのわからない言葉ばっかり。
“その事”って、なに。



