『同期のヤツらを飲みに誘ったのは俺だけど、須田だとか女子社員は勝手についてきただけ』
『……椋ちゃんから飲みに誘ったの? あたしが待ってるの知ってたのに?』
いやみったらしく聞くと、椋ちゃんは苦笑いして答えた。
『必死だったんだよ。咲良は、ずっと俺の背中ばかり見てついてきてたから。
一度いじめにあってから、ずっと。
だから、俺に逃げ込んでるだけかもしれないって思いがずっとあったし、受け入れたら、咲良は狭い空間で生きていかなきゃならなくなる気がしてた』
『片思いだって、椋ちゃんしか見てないんだから一緒じゃん。
狭い空間だって、そこに椋ちゃんがいてくれれば、あたしはそれだけで満足だもん』
『それに、付き合い出したりしたら、大学だとか社会人になった時、俺の存在が咲良の自由を奪う気がして踏みとどまってた。
ここ1年は、特に』
『……なんで?』
聞いたのに、椋ちゃんは微笑むだけ。
笑った椋ちゃんが、チラって横目であたしを見る。
その瞳が、すごく優しかった。



