「ファーストキスまで奪われて」


ジャケットをハンガーにかけながら言う椋ちゃん。
ムっとして、口を尖らせる。


「そんな事言うなら椋ちゃんだって、もうとっくに他の誰かとしてるんだからいいじゃん!
あたしだけじゃないもん。
それに、彼氏作れって言ったのは椋ちゃんなんだからね!」


クローゼットと椋ちゃんの間に入り込んで、椋ちゃんを見上げる。


「椋ちゃんに彼氏作れなんて言われて、あたしがどんな気持ちだったかなんて……。
椋ちゃんには分からないでしょ」


睨むみたいに見てるのに。
椋ちゃんは動じるどころか、ふって笑った。