パパは異常なくらいに心配して、ママはそんなのに負けてちゃダメって説得してきて。
それが苦しくて仕方なかった。
幼いながら、ずっと休んでるわけにはいかないのも分かってたし、気持ちを落ち着かせる時間が欲しかった。
家の中ですら息苦しくなりそうだった中、椋ちゃんだけがあたしに呼吸の仕方を教えてくれた。
『咲良。俺、もうすぐ試験だから勉強するけど、おまえもするか?』って。
『学校行く気になった時、勉強が遅れてたりすると不安になってまた行けなくなるかもしれないだろ』って。
逃げてる自分に気付いてた。
いつまでも逃げ回ってるわけにはいかない事も。
だけど、自分じゃ石ころばっかりの道を踏み出せなくて。
怖くて、苦しくて。
そんなあたしの背中を押してくれたのは椋ちゃんだった。
石ころをひとつひとつなくしてくれて、道が見えるようにしてくれて。



