「そうなんだって。櫻井もいい加減諦めればいいのに。
咲良の葉山さんへの想いは簡単には変わらないよ。中学から一緒のあたしが言うんだから間違いなし。
片思いでもなんでも、葉山さん以外目に入らないんだから」
「……今は、だろ」
粘る櫻井に、みっちゃんが「しつこいねー」なんて笑った直後、HR開始のチャイムが鳴った。
椋ちゃん、本名を葉山椋太と初めて会ったのは、あたしが小学校に上がる年だった。
パパの海外での仕事が終わって日本に住み始めたのが、あたしが7才の時。
パパと入れ替わりで椋ちゃんのご両親が、海外転勤になって。
その時、椋ちゃんがうちに預けられたのが始まりだった。
三年って期間の決まっている転勤だし、高校に通ってる椋ちゃんを連れて行くのは可哀想。
そういう理由で、椋ちゃんは日本に残る事になって。



