一途に IYOU〜背伸びのキス〜



秋の高い空。
浮かんだ真っ白な雲が動いてる。

夏から抜け出したような涼しい風が入り込んできて、胸の辺りまで伸ばした髪を揺らした。

椋ちゃんが、ショートよりもロングの方が好きって聞いてから、ずっと肩下の長さを保ってる髪。

視線を落とすと、校舎に向かってダッシュしてくる生徒がチラホラ見えた。
ケータイを開いて時間を見ると、8時34分。

HRが始まるまで、あと6分か。


「あっつ~。9月でも走るとさすがに暑いよね」


そう言ってあたしの前の席に座ったのは、みっちゃん。

本名、大沢美智子。

ふわふわのパーマがかかった長い髪をバサバサ揺らしながら、椅子にドカっと座る。

放っておけばスカートまで捲って仰ぎそうなみっちゃんに、周りの男子からチラチラ視線が集まっていた。