ただし、勘違いしないで欲しい。
あくまでこれは俺自身の単独行動。
荒川チームは無関係だ。
べつに荒川チームが日賀野チームのために手を貸しているわけじゃないし、俺個人が日賀野チームのために手を貸しているわけでもない。
俺個人が健太という友達を助けるために手を貸すまでのこと。
もし日賀野チームが健太の事件を解決できないようなら、俺はこの問題を自分のチームに持って行く。
それこそ健太をチームに引き入れる勢いだ。
チームが駄目と物申せば、俺個人で行動する。
そう、これはすべて俺の独断だ。
俺が友達を助けたい、その気持ちで動いているまでのことであってチームのためでもなんでもない。
それを覚えておいて欲しい。
リーダーに直談判すると、「随分と強気だな」弱いくせに、と皮肉ってくる日賀野。
だがその心意気は気に入ったとシニカルに一笑。
途端に俺は気に入られたくないと体ごとを引いた。
俺、お前に気に入られても嬉しくない。ちっとも嬉しくないから!
だってお前が気に入るイコール、苛めたくなるってことだろ!
そっろそろ俺、お前から解放されたいんだけど!
誰か、だれか、俺の身代わりになってくれる奴はいないか!
「ククっ…愛されてるな…。ヤマトに…、ククッ…、お前…、いじられキャラ」
くつくつと喉を鳴らして笑うススムは、俺の顔を見てぶふっと噴き出した。
失礼な奴だな。
俺はこんなにも困っているのに!
こうしている間も忙しなく俺の携帯は着信を奏でる。相手は勿論ヨウ。
犬猿の仲にあんな言い方をされちゃ、あいつの性格上、闘争心に焚きつかないわけない…、今頃怒ってるんだろうな。
目に浮かぶよ、あいつのイッライッラしながらコールをBGMに携帯を握り締めているお姿がさ。
日賀野に掛けるなって言われて、あいつが素直に「はい。掛けませんごめんなさい」なんて絶対あるわけないしな。
携帯の電源を落としておくべきだろうけど、健太のことを思うとどうしても電源が落とせない。
そのため俺は着信が途切れた頃合を見計らってマナーモードにする策をとった。
ごめんヨウ、今回ばかりは健太のために俺、こっちのチームに手を貸すよ。
あくまで友達のために。荒川チームで動くのはあくまで最終手段。
これは日賀野チームの問題であり、俺個人の問題だから。
「取り敢えず」
ケンのことについて全員にメールしたよ、ホシが日賀野に告げる。
此処にいない面子が集合するのも時間の問題だろう。
ホシの一報に頷き、これからどうやって健太の動きを掴むか、日賀野は膝に肘を置き頬杖をついた。
魚住の情報網で情報収集する。
それが最善の策であり唯一の策。



