「荒川や日賀野の怖いところは持ち前のリーダーシップ。二人は上手いのさ、個々人のパーソン能力の把握とその使い方が。
でなければ、二チームがこれほど地元で名を挙げるものか」


だって二チームのメート数は各々十人程度。


双方女の子がいるときた。

喧嘩ができない人間もちらほら、なのに二チームは強豪。


他チームがどんなに大勢で掛かっても、二チームの名は折れることがない。



素晴らしい実力だと思わないかい、ミヤ。


あっ、お前、欠伸はないだろ?

一応、語り部の気持ちを酌んでくれって。


ま、とにもかくにも話は続けるけどさ。


強いから、腕があるから、けどだからって荒川や日賀野が特別凄いというわけではなく、リーダーシップに長けている二人を支えている仲間達があってこそ、彼等は能力を発揮できているわけで。


特に精神面を支えているパーソンが二人には存在する。


日賀野で言えば魚住、斉藤もしくは小柳といったところかな。


荒川で言えば貫名、嘉藤そして田山。

前者より後者の不良の方が、精神面パーソンを把握しやすいから楽だよ。


なあ、ミヤ?


「ほおら、あのバイク。見なよ」
 

カズサが前方を顎でしゃくる。

眼球だけ動かし、ミヤは背後の道路に目を落とした。


歩道橋の下を潜っていくバイク、それに乗っていた不良二人を確認できるとミヤは一笑する。


「意外と早いな」


もう仲間の危機に気付いたか、目で笑うミヤにカズサもつられて笑う。
 

「仲間がSOSを送ったのかもしんないぜ? どちらにせよ、先導を走っていたバイク二人は貫名と荒川だってことが確認できたな。
すぐ相牟田や三ヶ森達も出動するだろうよ。

さあて間に合うかねえ、仲間の危機に。


今回のターゲットは荒川の精神パーソンのひとり」


チリン、指で25セント硬貨を弾き、空にそれを舞い上がらせた。

カズサは道路に落ちていく硬貨に満面の笑みを浮かべ、目を細める。
 


「弟分の嘉藤基樹」