青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―


 
閑話休題。

スーパーに足を運んだ三人は自動扉を潜る。

まずは飲み物売り場に行きましょう、先導するココロが首を捻って一笑。


直後のことだった。

ココロは前方から駆けてきた青年と衝突。

邪魔だと言わんばかりに体を押され、ココロは危うく尻餅をつきそうになる。


間一髪でモトが支えに回り、「なんだよ!」アブネェな、と相手に舌打ち。

気を付けろよ、キヨタも相手の無礼に鼻を鳴らした。


自動扉を掻い潜った青年はといえば、立ち止まって観察するように此方を睨んでいる。

私服姿だが年齢は自分達と変わらないような。

手には青年に似合わない花柄の薄紅財布がおさまっている。

ん、花柄の薄紅財布?

男のクセにあんな洒落た財布を、「アッー!」モトに支えられていたココロが血相を変えた。


「あ、あれ、私のお財布! い、いつの間に」

「は?! じゃあ、あいつっ…、あ、お前! ちょっと待てよ!」


スリかよクソッ!

モトは逸早く自動扉を掻い潜った。気付かれたと分かるや否や青年は一目散に駆け出した。

「逃がすか!」モトが絶叫し、

「財布返しやがれ!」キヨタも後を追う。

「ま、待って下さい!」私だけ此処に置いて行かないで下さい、


慌てたココロも後輩の後を追うためにBダッシュ。
買い物客の視線を振り払って走り出した。



「モト。あいつ、おかしいぞ」

「ああ。オレも同意見だ。なんなんだアイツ」
 

   
一歩リードした形でスリの後を追うモトと肩を並べたキヨタは、率直にあのスリはおかしいと物申す。

同調するモトは逃げるスリの背を睨んで、ただのスリじゃないと舌を鳴らした。

何故そう思うか。

本当にただのスリならば財布を盗んだ際、自動扉向こうで自分達のことを観察などしたりしない。


財布を抜き取ってそのままトンズラするだろう。それが筋である。


なのにあの青年はココロの財布をスッた後、一旦立ち止まって自分達の行動を観察した。


いや、追い駆けてくるよう唆したというべきだろうか。行動の節々が気に食わない。


どちらにせよ、スリはスリ。

とっ捕まえて張り倒さなければこっちの気が済まない!